花吹雪~夜蝶恋愛録~
どいつもこいつもひどいもんだと、セナは思う。



「あたしの好きな人だもん。別に静ちゃんにわかってもらわなくてもいいもん」

「わかんないよ。わかりたいとも思わない。でも、心配はしてるんだよ。私も、樹里もね」


静は子供に諭すように言った。

が、別に誰かに心配してほしいわけじゃない。



「ナオキの笑顔が見たいから、あたしは頑張って働いてんの。それの何がいけないの?」


詰め寄るセナ。

しかし静もまた、樹里と同じような顔で、



「報われるとは思えないけど」


と、言う。

セナは唇を噛み締めた。



「自分だってちょこちょこホスクラ行ってるくせに」

「私のは、たまの息抜きだよ。セナみたいに掛けでまで飲まないし。未収はただの借金でしょ。そこまで男に入れ込む意味がわからない」


静は咥えた煙草に火をつけ、吸い込んだ煙を吐き出した。



「ってか、それ以前に、私、『PRECIOUS』も、ナオキも、好きじゃないのよね。何もかもが作りものみたいで気持ちが悪いもん。彩さんもそうだったけどさ、人間臭さがまったく感じられないっていうか」

「は? お金払って素人みたいな接客される方が嫌でしょ」


セナの言い分を聞き、静はもう話す気もないとばかりに肩をすくめた。



「まぁ、好きにしなよ。どうせ、私が稼いだお金じゃないんだし」


静の細い指で灰皿になじられる煙草を見る。

どうして誰も、あたしの気持ちをわかろうとさえしてくれないのか。


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