花吹雪~夜蝶恋愛録~
ホストクラブ『PRECIOUS』は、この街一番の有名店。
大箱で、ホストの在籍数も、質も、もちろん店内の装飾だってどこにも負けない。
まさに完璧なるお城なのだ。
「セナ。4日ぶりだな。会いたくて死にそうだったよ」
そのわりには、さんざんヘルプの男で間を繋ぎ、30分も人を待たせたくせに。
「あたしもナオキに会いたかった」
なのに、口から出るのは文句ではなく愛の言葉なのだから。
どうしようもないなと、セナは自分で自分に思ってしまう。
この『PRECIOUS』で、ナオキはもう2年もの長きに渡り、ナンバーワンの座に君臨し続けている。
「何? 俺の顔に何かついてる?」
目を細め、首をかしげるナオキにセナは、しみじみと告げた。
「いやぁ、相変わらずかっこいいなぁ、と思ってさ」
男のくせに顔が整いすぎていて、さらには妖しい色気まで醸している。
ナオキは計算し尽くしたような顔と角度でふっと笑みをこぼし、
「可愛いな、セナは。俺、セナの言葉が一番嬉しいよ」
と、返した。
静は作りものみたいで嫌だと言っていたが、それの何が悪いのかと思う。
たとえ誰にでも言っていたとしても、惚れた弱みなのだから仕方がないじゃない。
セナは諦めとも開き直りともつかない思いを内心で噛み締めた。