花吹雪~夜蝶恋愛録~



張り切って飲み過ぎた。

ラストが近付く頃には、セナは卓でへばっていた。


でも、へばっている理由は、ただ単に飲み過ぎたからというだけでなく、ここにナオキがいないから。


ナンバーワンのナオキは、一度離れたら、いつもなかなか戻ってこない。

あたしのことを忘れているんじゃないかとすら思えてきて、セナはあからさまにふてくされる。



「ねぇ、ナオキはまだぁ?」


傍にいたヘルプの男に絡んだ。



「今日、ちょっと忙しいんですよ。でも、ナオキさん、すぐ戻ってきますよ」


この前も、その前も、同じような台詞を聞いた。

なだめられているだけだとわかる。



「ムカつく」


セナは唇を噛み締めた。

睨むようにヘルプの男に目を移し、



「あんたさぁ」


と、文句のひとつでも言ってやろうかと思ったのだが。



「って、あんた、誰? 前からいたっけ?」


見たことのない顔だった。

いくら大箱で、ホストの在籍数も多いとはいえ、これだけ通っていれば、それくらいはわかるつもりだ。


ヘルプの男は犬のようにふにゃっとした顔で笑う。



「少し前に入りました。(りく)です。まだわかんないことばっかっすけど、よろしくお願いします」

「ふうん」


セナは、陸とやらを、上から下まで舐めるように見た。
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