花吹雪~夜蝶恋愛録~
この完璧なるお城にいるのは、王子様ばかり。

その頂点のナオキは、さながら王様。


なのに、こいつは、どこからか迷い込んだ雑種犬のようだと思った。


陸は、セナがもっとも嫌いな素人くさいホストだ。

新人なのだから仕方がないといえばそれまでなのかもしれないが、でもいくら何でもこんなやつとは話していたくもなかった。



「あんたの名前なんかどうでもいいし。ナオキ以外は興味もない。あたしはナオキといたいからここにいるの」


刺々しく言ったセナの言葉に、陸は驚いた顔をしたあと、またふにゃっと笑い、



「すごいっすね」


と、言った。



「そこまで誰かを想えるセナさんはすごいです」

「………」

「で、ナオキさんも、セナさんにこんなに想われて、きっと幸せだと思いますよ」


こいつは何を言っているんだ。


なぜだか調子が狂い、返す言葉が見つからない。

これだから素人みたいなのは嫌なんだ。



イラ立つセナをよそに、陸は続ける。



「俺もセナさんみたいな人に愛されたいっす。絶対、毎日楽しいだろうし」


バカじゃないのかと思った。


仮にもホストのくせに。

嘘だらけの世界にいるくせに、本当に何を言ってるんだ、と。



ひどく気分を害したセナは、「帰る」と言い捨て、席を立った。


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