花吹雪~夜蝶恋愛録~



翌日の昼。

起床して、空腹に耐え兼ね、パンをほおばっていた時だった。


ピンポーン、と、玄関先からチャイムの音が。


嫌な予感。

それでも無視することができず、セナはため息混じりに玄関のドアを開けた。



「よう」


やっぱり。

と、思ったが、言わないでおいた。


疲れ切った顔をしたナオキが、不機嫌に首を傾け、そこに立っていたから。



ナオキは、何も言わないセナを気にすることもなく、さも当然のように家に上がり込んでくる。



「昨日さぁ」


ナオキは狭いワンルームのベッドに腰掛け、セナに目を向けた。



「昨日、何で勝手に帰った?」

「さぁ?」


ナオキが他の客を優先しすぎるからだよ。

と、言ってやりたかったが、でも嫉妬してるみたいで言えなかった。


セナは口をつぐんだままだったが、ナオキがそれで許してくれるはずもない。



「新人が、何か余計なこと言った?」

「え?」


確かに、ナオキに腹が立っていたとはいえ、帰る決意をさせられたのは、陸の言葉でだった。

でも、どうしてそれをナオキが知っているのかと思った。


ナオキは相変わらず不機嫌そうに言う。



「昨日、あいつ言ったんだ。自分が余計なこと言ったからセナを怒らせた、って」

「は?」
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