花吹雪~夜蝶恋愛録~
行為を終え、ナオキは煙草の煙をゆっくりと吐き出した。
いつもこのあとは、大体すぐに帰って行くのだが。
どうせ今日も同じだろうなと、セナが少し不貞腐れていたら、
「なぁ、セナ」
と、ナオキは物憂げに声を掛けてきた。
もしかしたら、珍しく、昼食の誘いかもしれない。
そう期待して「うん?」と返事をするセナに、しかしナオキは物憂い顔のまま。
「お前、ぶっちゃけ、未収分どうすんの?」
「……え?」
「こんなこと言いたくねぇけど、大丈夫なのか心配になって」
掛けで飲むということは、つまりはツケで、それはホストが肩代わりしているような形だ。
だから、ナオキの心配もわかるけど。
「だ、大丈夫だって。昨日だって給料入っていくらか返したじゃん」
「でも、あんまり減ってねぇよ」
「……それ、は……」
口ごもるセナ。
ナオキは、そんなセナを見もせずに煙を吐き出す。
「今の給料じゃあ、足りないんじゃない?」
「えっ」
「お前、キャバ辞めてもっと稼げるとこに行った方がよくない?」