花吹雪~夜蝶恋愛録~
脳天から切り裂かれたような衝撃だった。


言われている意味がわからなかった。

いや、わかっていても、理解したくなかったのかもしれない。



「……『稼げるとこ』って?」


声を震わせながら問うセナに、



「たとえば、風俗とかさ」


と、ナオキは顔色ひとつ変えないまま言った。


冗談でしょ、と、笑って返したかった。

でも、ナオキの目は、笑って返せるような柔らかいものではなかった。



「ナオキは、あたしが他の男に触られてても何とも思わないの!? 他の男のモノを触る仕事をしててもいいって思ってるの!?」

「別に。何の仕事してたって、セナはセナじゃん。俺の気持ちは変わらないけど」

「でもっ」


それでも声を荒らげようとしたセナを、ナオキの言葉が制した。



「職業で差別なんてしないし。つーか、キャバで無理して、酒飲んで体壊すかもしれないよりは、風俗の方が楽じゃね? 短時間で今より稼ぐことだってできるわけだし。そしたら俺らが会える時間も増えるじゃん。俺はセナのためを思って言ってるつもりだよ」


あたしのために?

ナオキはあたしを風俗に落としてもっと稼ぎたいだけでしょ。


そう思う反面、未収分のこともあるし、収入が今より増えるならナオキが喜ぶかもしれないとも思い、もうよくわからなくなった。



「……考えとく」


ぼそりと言ったセナの言葉を聞き、ナオキは「わかった」とだけ返して、煙草を消して部屋を出て行った。


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