花吹雪~夜蝶恋愛録~
陸の、傷つけられた子犬のような顔を、見ていられなかったのかもしれない。
しかし、セナの思いに反し、陸は目に力強さを宿して返した。
「まだ何も見つけてないからっすかね」
「……『見つける』?」
「何がどうとかじゃないんですけどね。ただ辞めるのは簡単だけど、それだと逃げただけみたいでしょ? だったら、何か得てからでもいいのかなぁ、って」
よくわからないやつだと思った。
セナは首をかしげるばかり。
「働いて得るものなんて、お金以外に何があるっていうの?」
「経験とか、人との出会いとか、色々あるじゃないですか」
「ふうん」
そんなものに、何の意味があるというのか。
「あんた、純粋なんだね。あたしにもそんな頃があったような気もするけど、もう思い出せないや」
陸は純粋すぎるのだ。
対して、ナオキくらいわかりやすく汚れた男の方が、自分の醜さを隠してくれてるみたいで、楽でいい。
内心で自嘲したセナに、けれども陸は、
「ナオキさんをあれだけ想えるセナさんの方が、俺から見れば純粋だと思いますけど」
と、言った。
陸の屈託のない笑顔から、セナはたまらず目を逸らした。
しかし、セナの思いに反し、陸は目に力強さを宿して返した。
「まだ何も見つけてないからっすかね」
「……『見つける』?」
「何がどうとかじゃないんですけどね。ただ辞めるのは簡単だけど、それだと逃げただけみたいでしょ? だったら、何か得てからでもいいのかなぁ、って」
よくわからないやつだと思った。
セナは首をかしげるばかり。
「働いて得るものなんて、お金以外に何があるっていうの?」
「経験とか、人との出会いとか、色々あるじゃないですか」
「ふうん」
そんなものに、何の意味があるというのか。
「あんた、純粋なんだね。あたしにもそんな頃があったような気もするけど、もう思い出せないや」
陸は純粋すぎるのだ。
対して、ナオキくらいわかりやすく汚れた男の方が、自分の醜さを隠してくれてるみたいで、楽でいい。
内心で自嘲したセナに、けれども陸は、
「ナオキさんをあれだけ想えるセナさんの方が、俺から見れば純粋だと思いますけど」
と、言った。
陸の屈託のない笑顔から、セナはたまらず目を逸らした。