花吹雪~夜蝶恋愛録~
最後に『PRECIOUS』に行ってから、1週間。
ナオキに会いたいとは思うが、でも風俗に行くかどうかの答えはまだ出ないまま。
だから顔を合わせづらいというのもあり、自然と足が遠のいていた。
相変わらず、憂鬱なままに仕事を終えてスマホを見たら、ナオキからのメッセージが。
【最近、連絡ないけど、どうしてんの?】
どう返信していいかわからず、スマホの画面を眺めて悶々としていたら、
「セナ」
と、背後から掛けられた声に、びくりと肩が上がった。
振り向くと、樹里が不思議そうにセナを見ていた。
「何? どうしたの?」
「あ、えっと……」
「っていうか、セナ、ここのところずっと元気ないみたいだけど、体調悪い?」
「いや、体調が悪いとかじゃないけどさ」
「じゃあ、どうしたのよ? 何か悩みでもあるの?」
ナオキに風俗に行った方がいいと言われた。
などと、樹里に言えば、またカモにされているだの何だのと言われかねない。
セナは曖昧にしか笑えなかったのだけれど。
「悩みがあるなら聞くよ。今晩、時間あるし、付き合ってあげる」
「えっ」
「何か憂さ晴らしがしたいっていうなら、ホスクラでもいいし」
樹里の言葉に、セナはひどく驚いた。
「樹里ちゃん、どうしたの!? ホスクラ嫌いじゃなかったの!?」
「うーん。ホスクラが嫌いっていうよりは、ホストが嫌いなんだけど。でもまぁ、可愛い後輩が悩んでるなら、私もたまにはそれくらいは、って」
ここまで自分を想ってくれている樹里に、悩んでる原因はそのホストなんですけど、とは、もちろん言い出せるわけもなかった。
セナはやっぱり曖昧にしか笑えないまま。