花吹雪~夜蝶恋愛録~
しどろもどろに答えるセナ。

樹里はそんな様子のセナを横目で見て、あからさまにため息をついていた。



「で、セナ、どうしたの?」


樹里に改めて問われ、はっとする。



「あ、えっと……」


どうしてこんなところにきてしまったのだろうかと、今更ながらにセナは自分の浅はかさを悔やんでしまうのだけど。


ナオキがいる前で樹里に相談なんてできない。

だって相談すれば、ナオキの目の前で、樹里に間違いなく反対されるに決まっているから。



「と、とりあえず飲もうよ、樹里ちゃん」


みえみえの誤魔化しで言って、セナは無理やり樹里のグラスに乾杯をした。

樹里は納得していないような表情だが、突っ込んだことを聞いてはこないまま、セナの様子をうかがっているようだった。


が、空気が重いと感じていたのはセナだけではなかったらしく、



「つーか、葬式かっつーくらいに静かなんですけど」


と、舌打ち混じりに言ったナオキは、



「『Rondo』のナンバーワンさんさぁ。そんな嫌そうな顔で酒飲まれたら営業妨害なんですけどぉ」


と、今度ははっきりとわかる声で、樹里に嫌味を放つ。
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