花吹雪~夜蝶恋愛録~
「あんた、ここで何やってんの?」

「俺は買い出しです」


陸が右手に持つコンビニ袋の中には、数々の銘柄の煙草があった。



「パシられてんじゃん」

「はい。新人なんで」


律儀にも答えた陸だったが、次にははっとしたように、「いや、俺のことはどうでもよくて」と、話を戻す。



「セナさんこそどうしたんですか?」

「別にどうもしてないし」


自分が泣いていたのだと今更になって思い出したセナは、鼻をすすり、涙を拭って、バツの悪さから目を逸らした。

が、陸がそんな返答に納得してくれるはずもない。



「泣いてるなんてただごとじゃないですよ」

「………」

「それだけ喋れるってことは、どこか痛いわけじゃなさそうだし。ってことは、店で何かあったってことですよね?」

「………」

「ナオキさんと、何かあったんですか?」


犬のくせに。

もっとバカな男なのかと思っていたが、陸はなかなか鋭いところがあるらしい。


言い当てられ、言葉に窮するセナ。

そんなセナを見て、陸は肩をすくめて隣で同じようにしゃがんだ。



「ひどいですよねぇ、ナオキさん。こんなに自分を想ってくれる人を大切にできないなんて、きっといつかバチが当たりますよ」
< 99 / 113 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop