君との想い出が風に乗って消えても
君と、あの場所に
加恋ちゃんが転校してきてから二ヶ月以上経った。
明日は一学期の終業式。
今日も一学期最後の授業が終え、加恋ちゃんと一緒に下校している。
加恋ちゃんが転校してきた初日から。
僕と加恋ちゃんは一緒に下校している。
いつも一緒に下校しているから。
クラスの中で僕と加恋ちゃんのことが噂になっている。
けれど。
残念ながら。
僕と加恋ちゃんは恋人同士ではない。
……でも、本音は。
噂通りになれば……なんて、ほんの少しだけ思ったり思わなかったり……。
というわけで。
今日も友達の加恋ちゃんと、のんびり穏やかに歩いている。
加恋ちゃんと一緒に並んで歩く帰り道。
僕は隣にいる加恋ちゃんのことをチラッと見た。
加恋ちゃんのきれいな横顔。
その横顔に何度も引き寄せられそうになる。
そんな僕は、あることを考えていた。
明後日から夏休み。
僕は夏休みの間に加恋ちゃんと一緒に行きたいところがある。
それは、あの秘密の場所。
僕は、どうしても加恋ちゃんと一緒に行きたいと思った。
そして一緒にあの美しい景色を見て過ごしたい。
だから。
「加恋ちゃん、夏休み中で加恋ちゃんの都合が良いときに
加恋ちゃんが転校してきた初日に約束していた、
あの秘密の場所に行きたいと思うんだけど、どうかな」
加恋ちゃんにそう訊いた。
「うん、行きたい。ありがとう、優くん」
加恋ちゃんはとびきりの笑顔でそう言った。
その笑顔は、太陽の恵みをいっぱいに受けた美しく咲く花そのものだった。
そんな加恋ちゃんの笑顔に。
僕は見惚れた。
「こちらこそ、ありがとう、加恋ちゃん」
そうなりながらも。
僕は加恋ちゃんにそう言った。
そして僕と加恋ちゃんは、会う日と待ち合わせ場所と時間を決めた。