君との想い出が風に乗って消えても
そんな雰囲気を感じるからか。
花咲さんが歩くだけで男子たちは、ざわざわしていた。
そんな雰囲気の中、花咲さんが僕の隣の席に着いた。
花咲さんは椅子の背もたれに手を乗せた。
繊細そうな細くてきれいな指。
その指で椅子の背もたれを後ろに引き、スッと座る。
とても上品な座り方。
そして美しい姿勢。
そんな花咲さんのことを見つめている……見惚れていると……。
花咲さんが僕の方を見た。
「草野くん」
美しい声で僕の名前を呼んだ。
花咲さんの美し過ぎる声が。
耳から全身に広がり。
何ともいえないような心地良さを感じる。
「わからないことがあったら教えてね」
そんな感覚になっていると。
花咲さんはやさしく微笑んでそう言った。
「……うん……」
……なんか。
照れてしまう。
花咲さんと言葉を交わすと。
「……僕は草野優、よろしくね」
そう思いながらも。
花咲さんに挨拶をした。
「こちらこそよろしくね」
花咲さんも笑顔でそう言った。
その笑顔は天使のよう。
僕は、その笑顔に見惚れていた。