君との想い出が風に乗って消えても



「……まさか……」


 まさかあの言葉……。

『来年の今頃は、ここにはいない』


 加恋ちゃん……。


 加恋ちゃんは、しばらく無言になった。


 加恋ちゃんが無言になっている間、僕は不安でたまらなかった。


 今まで気になっていた言葉。

 加恋ちゃんから時期が来たら話すと聞いたときから。
 僕は、ずっとずっと不安だったんだ。


 加恋ちゃんがそれを話すのはいつなのだろう……。


 ……でも本当は。
 そんなときが来なければいいと思っていた。

 加恋ちゃんからそれを聞いてしまったら。
 本当に加恋ちゃんが僕のもとからいなくなってしまう。
 そう思ったから。

 だから。

 お願い。
 お願いだ、加恋ちゃん。
 もう何も言わないで……‼



「……優くん……」


「……か……加恋ちゃん……
 いいんだよ、無理して言わなくても……」


 ……違う……。

『無理して言わなくても』じゃない。

 本当は。
 聞きたくないんだ。

 加恋ちゃんが今から言おうとしていることを。


「……優くん……」


「……か……帰ろうか、そろそろ。
 帰るの晩くなっちゃう」


 聞きたくない‼


「……優くん……」


「ほら、帰るよ、加恋ちゃん」


 僕は加恋ちゃんの手を引っ張って秘密の場所から出ようとした。


「優くん‼」


 ……僕は……。


「……聞きたくない……」


「……優くん……?」


「聞きたくないよ‼」


「優くん……」


「……なんで……
 なんで……そんなこと聞かなくちゃいけないの?」


 なんで……そんな……。

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