君との想い出が風に乗って消えても



「……優くん……」


「嫌だ」


「お願い、優くん」


「…………」


「優くん、こっちを向いて」


「…………」


「優くん……」


 ……加恋ちゃん……。


 加恋ちゃんは僕の正面に回り込んだ。


 加恋ちゃんが僕の正面に来たとき、加恋ちゃんと目が合った。


 加恋ちゃんのきれいな顔がはっきり見える。


「優くん」


 加恋ちゃんの純粋できれいな瞳。

 その瞳で見つめられた僕は全身の動きを止められているように……。


 ……⁉

 ……って、本当に止められている……⁉


「かっ……加恋ちゃん……⁉」


「優くん……
 優くんが私のことを好きって言ってくれて本当に嬉しかった」


「加恋ちゃ……」


 ……⁉


 ……こ……声も出ない……⁉


「そして……優くんと……
 恋人……同士……になれて本当に幸せだった」


『だった』……って……?
 なんで過去形……?


「……でも……本当は……
 私は優くんと恋人同士になってはいけなかったの……」


 ……え……⁉


 それは……どういうこと……?


「最初、優くんと会ったとき、
 そのときは優くんとほんの少しでもお話ができればいいと思っていたの」


 ……え……?


「それ以外は何も望まない……」


 ……話が……読めない……。


「……私……優くんと学校で初めて会う前から……
 優くんのこと……知ってたの……」


 ……え……⁉

 僕のことを知っていた……?


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