君との想い出が風に乗って消えても



「私は優くんにお礼を言いにここに来ただけだから……」


 ……え……?

 お礼を言いに……って……?


「私が転校してきた日の放課後、
 私が歌っていた歌……
 あの歌は優くんが聴かせてくれていた歌だから……」


 ……え……?

 僕が……?
 加恋ちゃんに……?

 いつ……?


「優くんが、毎年、年に一度、
 私がいる何日か、ほぼ毎日
 あの歌を聴かせてくれていた……」


 ……毎年……?
 年に一度……?
 何日か……?
 ほぼ毎日……?

 加恋ちゃんに聴かせていた……?

 ……どこで……?


「……この場所で……」


 ……⁉


 こ……この場所で……⁉

 一体どういうこと……?


「毎年ありがとう、優くん。
 あの素敵な歌を私たちに聴かせてくれて……」


 ……え……?

 私たち……?

 どういうこと……?


「そして話しかけてくれてありがとう。
 私は毎年、優くんに会うことがとても楽しみです。
 今年も、もうすぐだね……」


 今年も……?
 もうすぐ……?

 一体何の話をしているの⁉


「でも……今年からは、ちょっと物足りなくなっちゃうのかな……。
 だって今こんなにも優くんとお話ができているから」


 ……え……。


 ……ちょっと待って……。

 加恋ちゃん……それって……。


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