君との想い出が風に乗って消えても



「……一輪の花……」


 まさか……。


「毎年咲く一輪の花……」


 そんなこと……。


「……毎年……今年も元気に咲く予定です……」


 ……う……うそだ……。


 ……加恋ちゃんが……。

 加恋ちゃんが……毎年咲くあの一輪の花……?


「優くん、私は優くんとこうして直接お話ができて、友達になれて……
 それから……恋人同士になれて、とても幸せでした。
 本当にありがとう」


 ……加恋ちゃん……‼


 まだ……声が……出ない……‼


 加恋ちゃん……‼
 嫌だ……‼
 僕は……‼
 僕は、ずっとずっと……‼
 ずっと加恋ちゃんと一緒にいたい……‼

 それなのに……‼

『ずっとずっと一緒にいたい』

 その言葉が……出ない……‼

 なんで……‼
 なんで……声が……‼
 声が出ないんだ……‼


「心配しないで……
 私が消えたら優くんの記憶はなくなるから」


 ……え……?

 記憶……が……?


「私の記憶は全てなくなるから」


 そんな……。

 加恋ちゃんの記憶が全てなくなるなんて……。

 そんなことって……‼


「そういう約束なの」


 約束って……?

 誰と……?

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