君との想い出が風に乗って消えても
僕は何かが引っ掛かり続けていたけれど、無理に気持ちを切り替えた。
「一輪の花さん……今日も歌わせてね……」
僕はそう言って。
毎年、一輪の花が咲いたときに歌っている歌を歌った。
曲名も知らない。
だけど美しくて少しだけ切なさも感じる歌……。
僕は心を込めてその歌を歌う。
僕の歌声が。
秘密の場所全体に響き渡る。
そして僕の歌声が春のやさしい風と共にやさしく流れる。
その僕の歌声に、一輪の花やたくさんの草花たちが一緒に合わせてくれているように見える。
今年も一輪の花やたくさんの草花たちに僕の歌を聴いてもらっている。
……ただ……。
やっぱり今年は違う……。
昨年までは。
歌を歌わせてもらっているとき。
僕はとても幸せな気持ちになった。
でも今年は……。
今年は……辛い……。
辛くて辛くて……。
苦しくて苦しくて……。
……切なくて……。
……涙が止まらない……。
悲しいよ……。
悲しくて悲しくて……。
理由はわからない。
けれど。
僕は涙が止まらないまま歌い続けた……。
結局、僕は歌い終わるまで涙が止まらなかった。
そして歌い終わっても……。
「……ありがとう、歌わせてくれて。
明日もまた来るね」
一輪の花やたくさんの草花たちにそう言って。
この場所を出ようと歩き出した。
『優くん……』
……え……?