ムボウビハート


 「前に、さ?あんずに置き手紙ひとつ残して、出て来ちまったときに。」



あらたの瞳が少し、歪む。



あたしも、あの時を思い出して苦しくなる。



「だから、悪かったって。そんな顔、するな。」



あらたの手のひらが、あたしの頭をゆっくり撫でる。



「俺、さ?どうやってあんずを迎えにいけばいいか分からなくて。あんずはもう、俺を好きじゃないかも知れないし、他に好きな奴が出来たのかも知れない。そもそも、俺を好きだったのかも、自信がない。」



そんな風にゆっくり話すあらたは、苦笑を浮かべている。




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