ムボウビハート



 あらたのマフラーと一緒に、ひとつのハンガーにかけておいたら、



「俺と一緒の匂いにして、やる。」



お気に入りの香水を、あたしのマフラーにつけてくれたから。



思えばあたしは、あらたで出来ている。



香りも想いも、声も、指も。



あらたの全てが、あたしに染み込んでいる。



冷たく赤くなった指先は、手袋を忘れたから。  



ううん。これは罰、だ。



疲れているあらたに、あんなに酷い言葉を投げつけてしまった、あたしへの。



「…あらたの、馬鹿…」



ちいさな声でつぶやいた。



ちがう。馬鹿は、あたしだ…。




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