ムボウビハート



 「誰が、馬鹿だって?」



声がするのと同時に香る、いつもの、白。



あらたの、白。



「こら。誰が馬鹿、だ。馬鹿あんず」



振り返ると、



「…イタい、です」



あたしの頬をつねる、あらたの指先。



「ワリー、余裕無くした。だから、許せ」



ちっとも、悪くなんて思っていないであろう、いつものイジワルな笑みを浮かべる、あらた。



「あんずは?ごめんなさい、だろ?」



緩やかに弧を描く、口もと。



「…ごめんな、さい、」



滑るように出た、あたしの言葉に一度、ちいさく頷いてくれた。




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