ムボウビハート
「ほら、忘れ物」
言いながら、あらたが自分のコートのポケットから取り出したのは、プレゼントしてくれた黒い手袋。
穿かせてくれようと、あたしの手を取ったあらたは、
「馬鹿、真っ赤になってんじゃねーか」
両手であたしの両手を包んでくれた。
あらたが分けてくれるぬくもりは、いつだってあたしを優しく包む。
ちゅ。一度、あたしの手の甲にくちづけをくれたあらたは、そのままあたしの手を引いて、歩き出した。
「帰ったら、ココアを作って、やる。今日は特別、な」
ぶっきらぼうなその口調も、愛おしい。
「じゃあ、あたしがあらたを暖めてあげる」
ね?微笑めば。
「お互い様、だ。バーカ」
ちいさなケンカも、仲直りのキスも、手袋もココアも。
これからも続く、あたしとあらたの大切な思い出になる。
「…あらた、好き。…前よりも、もっと」
「俺も、だ。バーカ」
「ハツユキハート」
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