ムボウビハート



 またも遠くで鳴った、雷。


少し、肩をすくめたあらた。


「なぁ、あんず。かき消してくれよ。あんずの声で。」


あたしを抱き締めたまま、耳元で囁くあらたの声。


「いいよー。じゃあ、歌ってあげる。何の曲がいい?」


あらたに問い返せば。


「…お前なー、こういう場合は、そういう意味じゃないだろ。」


言うのと同時に、あたしの体を倒した、あらた。


「……きゃ…!」


思わず出た、そんなあたしの声に。


「そうそう。それそれ。」


見下ろす目元が、セクシーにあたしを捕らえる。



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