愛を教えて欲しくない

普段はただ下ろしただけのなんの手入れもしていなかった私のいつもとちがう髪型をみて、慧は目を輝かせながら「さわっていい?!」と言って私からの返事を聞く前に腕を髪へと伸ばした。

ずっとニコニコして終始ご機嫌な様子で私の髪を触っていた慧は、遊びの時間の終わりを告げる掛け声が聞こえると、名残惜しそうに髪を梳きながらその手を下ろし、そのまま滑るように私の手を触った。

「まなちゃんのかみ、すっごくきれい!」


目尻と口角を極限まで近づけて大きく微笑む彼に照れくさくなって、思わず顔を背けて口をもごもごと動かして、ありがとうと返したと同時に心の中がズキズキと罪悪感で蝕まれていった。


もうこんな風に髪を結んでもらうことも、可愛い髪型をすることができるのも、今日限りかもしれない。

そうしたら慧にきれいと言われることもないのかな、そう思うと罪悪感で蝕まれていた心の中を今度は寂寥感が蓋をするようにじわじわ滲んでいった。


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