愛を教えて欲しくない
「…でもおかあさん、きょうだけしかやってくれないとおもうよ。だからけいちゃんがきれいなまなみれるの、きょうだけかもしれない」
俯きながら私の手を握る慧の親指に触れ、小さくため息を落とした。
「じゃあおれがまなちゃんのかみのけむすんであげる」
思いもよらなかった言葉に強ばっていた肩の力が抜け、恐る恐る視線を向けた。
「だからおれにしかさわらせちゃだめだよ!さわらせたらおこるからね」
どうしようもないほど嬉しくてなって、種を頬張るハムスターみたいに頬を膨らませ私の髪を旋毛から毛先まで優しく撫でる慧に向かってうん、と小さく頷いた。
可愛いを具現化したような少年だった幼馴染は、私が思い出に浸っている間も尚、机に体を乗せてあの頃と同じ腰まである私の髪を梳かしたり、三つ編みしたり好き勝手している。
クラスメイトの視線が担任に集まっているからと、やりたい放題の幼馴染のいつもは見ることの出来ない旋毛をぐぐぐっと押した。