揺るぎのない愛と届かない気持ち

俺と紗英 〜東吾

「篠原 東吾です。よろしく。」

「高木 紗英です。」

柔らかい紗英の声が耳に心地よかったが、
紗英は俺に
何の興味もないようだった。
本人も、
幾人もの新郎海斗の友人を紹介されて、
いい加減疲れていたのだと、
付き合ってからそう教えてくれた。

ただ、それだけで終わった俺たちの初対面。

縁がなかったのかなぁ、と諦めつつも、
また会いたいという気持ちも
大きく膨らんで
海斗と香衣さんに再会の機会を作ってくれと
お願いしようと思っていた矢先のことだった。

紗英と会うことができた。
偶然にだが。

「高木 紗英さん、、、?」

「はい、、、、?」

紗英は俺を覚えていないようだった。

仕事に必要な専門書を探しに図書館へ
出向いた時だった。
紗英も自分の仕事の専門書を探すために
やって来ていたそうだ。

「先日結婚式でお会いしました、
篠原 東吾です。」

「あっ!ごめんなさい。
あの日たくさんの人を紹介されて、、、

そうですね、イケメンさんでしたね。」

紗英があの時は見せなかった
柔らかな笑みを見せた。
胸がときめいた。
中坊のようだったが、、、
いや、まさに中坊だった。

その日
後から疲れがどっとくるほど、
言葉を尽くし、誠実な姿勢を見せつつ、
紗英を口説きに口説いて
なんとか初のデートの約束に繋いだ。

紗英ははじめは迷惑そうにし、
図書館員にお静かにと注意をされた頃には
本当に芯から迷惑そうにしていたが、
それでもめげずに紗英を口説いて、
粘り勝ちをした。

紗英は、図書館じゃなかったら引っ叩いて、
その場を走り去ったのにと、
笑いながら後々言っていた。

でもね、、、

「でもね、
何となく断る口実もないような気がして、、、
きっと、私もあなたのこと内心ではいいなって
思っていたのかもしれない。
まぁ、暗示にかけられたのかもしれないけど。」

初めて紗英と結ばれた日に、
俺の腕の中で紗英は言っていた。

紗英とデートをしてから、
ここまでの付き合いに持ってくるのが、
長かった。
少しずつ少しずつ、距離を縮めて、
自分を信頼してもらえるように努力を
重ねていった。



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