揺るぎのない愛と届かない気持ち
「東吾さん、やめて。」

紗英は、
土下座をする俺を立ち上がらせようと、
俺の手を取った。

「いや、俺から逃げないって言うまでここで
土下座をし続ける。」

俺も頑なに、頭をあげなかった。

紗英はため息をつくと

「話は聞くから、ひとまず立ち上がって。」

と言った。

それから立ち上がって、
すぐそばの公園へ行った。
そこでも俺は謝罪し続けた。
懺悔の言葉も吐いた。

「東吾さんが私に謝っても仕方ないでしょう。
私ではなく、
今までお付き合いをして来た人たちに
謝んなさい。
私は今の東吾さんしか知らないし、
あなたに大事にされていると思う。
けど
君だけは特別なんだって言われるのは嫌、
そんな薄情な男が自分の恋人だなんて、
嫌ですもの。」

紗英が言うもっともな言葉に、俺は言葉を失う。

「過去には戻れない。
その過去は、私が預かり知らぬあなたの過去。
私にだって過去はある。
けど、あなたとは無縁のこと。
そのことで東吾さんと過去の人を
比べたり、どちらかを貶めることなどしない。」

紗英の過去。。。
紗英も辛い恋をしていたと言っていた。

でもその恋はもう既に終わって、
自分の中で消化していると。
きっと
また会うことがあったとしても、
見知らぬ人の目で通り過ぎるだけだろうと。

「嫌な思いをさせてごめん。
本当に人に誇れるような恋はしてこなかった。

誰と比べるわけではなく、
俺にとって紗英は紗英しかいないほど、

好きだ。

愛している。
結婚してほしい。
俺と未来を夢見てほしい。」

俺は一気にプロポーズまでしてしまった。
勢いではなく、
紗英と人生を共にしたいと思っていたのだ。
付き合い始めて1年しか
たっていなかったけど、
充分に充分に紗英を愛していた。


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