揺るぎのない愛と届かない気持ち
赤ん坊の泣き声で目を覚まし
そこで私が見たのは、
白い天井と上から私を見下ろす6つの目。

みんな目が赤い。

「紗英ちゃん、目が覚めた?」

あぁ、お母様だ。

母の声は湿っていた。

「紗英、苦しくはないか?」

父の声は震えていた。

「しゃぁちゃん、戻ってきてくれたね。」

年の離れた弟慶(けい)はいつも私のことを、
妹だと言わんばかりの生意気な態度だ。。。
それも、
大好きの裏返しだと私は知っているが。
その生意気な弟の目も真っ赤だ。


「私の子供、、、泣き声が聞こえたの。」

一番気になってきることを尋ねた。
頭の中にまだ靄がかかっているようだ。

「紗英ちゃんベビは、ここにいるわよ。
さっき部屋に入って来た途端に
大声で泣き出して、、、
今は
嘘みたいに静かに寝ている。」

母が赤ん坊が寝かせられているベビーコットを、
真横に持って来てくれた。

小さな天使は、両手をケットから出して、
気持ち良さげに寝ていた。

「可愛い、、、」

子供の安否を確認した私は、また目を閉じて眠ったらしい。

この日
産んだばかりだと思っていた私は、
帝王切開後覚醒することなく
4日間経っていたということだった。

翌朝は
きちんと目覚めて看護婦さんや担当医、
連絡を受けた家族のものたちを
大いに安心させた。



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