揺るぎのない愛と届かない気持ち
まるで、今何時ですかって尋ねるくらいに
自然にお母さんは尋ねられた。

「東吾くん、不倫の味はどう?」

口にしたばかりのコーヒーを
思わず吹き出しそうになった。

どうって、
どうって、、、

「そのお相手さんは、
あなたの元カノさんですってね。

しかもご自分は結婚間近。
お互いに未練があったのかしら?」

「。。。。。」

「紗英は、お相手さんが
あなたの元カノさんだったって知っているの?

まぁ、
きっと知っていてもあの子はそれであなたを
責めることなんかしなかったでしょうね。
過去のことだって。

あなたが自分の結婚式に元カノさんを、
堂々と呼ばれたとしてもね。

夫がね、、、
あの日あなたは彼から鉄拳を
お見舞いされたから
わかっているでしょうけど、
とても怒っていてね、
あなたとは離婚させるって。

まぁ、
職業柄色々と調べるのはお手のもので、
お相手さんが実は元カノで
延々と、
仕事でも趣味のフットサルでも
繋がっていることが、わかったの。」

お父さんは弁護士だ。

お父さんが本気を出せば、
俺と長内はの言い分など
一溜りもないだろう。


「まぁね、彼も人のことは言えないのよ。
自分だって若い頃に浮気しちゃって、
私からこっぴどく、

そうねぇ、男としては
立ち直れないくらいに、
こっぴどくやられたから。」

お母さんは涼しい顔をして、
爆弾を落とした。
これだから、
紗英のお母さんは怖い。
秘めたる力がてつもなくでかい人だ。

「それが娘のこととなると、
我が身に置き換えられないくらい、
娘を悲しい目に遭わせた、婿が憎いのよ。

私は紗英のことを思うと、
夫と同じ気持ちだけど、
彼本人のことに関して言えば、
人のことが言えた義理かって、
言いたいの。」

「。。。。。」

何と言えばいいのだろうか。
お義母さんは何事もないように、
コーヒーを飲んである。

お義母さんにかかると安いコーヒーでも、
五つ星のホテルのコーヒーのように
高級なものに見える。

小さくコトリと音をさせて、
カップをテーブルに置かれた。

顔を上げて真っ直ぐに、俺を見据えられる。

怖い。


「東吾くん、あなたは最低よ。

身重の妻がいる身で、
婚約者がいる元カノと、
妻との神聖なベッドでいたすってことは

最低以外の何ものでもないわね。
初めっから、
元カノさんと寝る気で
紗英の留守を狙って
部屋に連れ込んだのかしら?」

「いえ、そんな気はさらさら、ありません。

元カノだけど、
彼女とは恋人同士になれないってわかって、
このままずるずると
恋人を続けて、憎みあって別れるくらいなら、
元の気が合う、男と女だけど、
親友同士と言ってもいい間柄に戻ろうと、
二人とも同じ考えで、、、

恋人同士というような
付き合いは1年にも満たないくらいで、
友達同士の方が長いくらいです。
あれからもう5年以上以っています。」

しどろもどろになりながら、答えた。

「そう?
じゃぁ、なぜあの日二人で寝ていたの?裸で、、、

私、
紗英が握りしめていた携帯から見ちゃったのよ、
あなたたちの裸の写真。」

思わず俺は天を仰いだ。
神がいるなら、助けて欲しかった。



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