揺るぎのない愛と届かない気持ち
父の浮気話は、
とてつもなく大変なお家の一大事だったのだろう。

全ては
この母の筋書き通りというところが恐ろしいが、
母曰く
お祖父様もとっくに
お母様の考えなんかお見通しだったのよ。

父は軽い気持ちでお相手さんと
一線を越えたらしい。

母のことは一目惚れで結婚しておきながらも、
それを言うのは恥という
変なプライドで、母との距離を詰められず、
家では自分の母親の目が光っていて
二人でゆっくりなどとはできなかった
と言っていた。
(二人でゆっくりしていたら、必ず祖母が来て
母にあれこれと用事を言いつけていたらしい。
要するに嫉妬だ)

そのうち妊娠して
つわりや祖父の介護も始まり、
自分との時間を蔑ろにされているように
父は感じたと言ったので、

母はビンタをお見舞いしたと言っていた。

そんな時に先輩に
連れて行ってもらった小料理屋で、
家庭らしい料理に触れ
優しく話を聞いてくれる人に出会って、
父の気持ちは大きく傾いたのだろう。

それでも、女将と客という二人だったのに、
ある日裁判に負けて、腐っている時に
つい深酒をして
気がついたら同じ布団の中で、
全裸で抱き合っていたらしい。。。
要するに男と女になってしまったのだ。

父は自分の立場もあるので、
これっきり行くのはやめよう
と思っていたが、
お相手さんが
事務所に電話をかけてくるようになり
(今みたいに携帯が一般に普及していなかった)
父はその事務所の電話で、
断ってぐずぐずと電話を長引かされるより、
わかりましたと言った方が簡潔に終わると、
言われるまま、
ずるずると関係を続けてしまった。
と父は言ったが、
お相手さんは
’私たちは縁があったんです。’
と、
まだ脳内がお花畑だったそうだ。

近場の温泉旅行も、
自分のアパートに呼ぶのも
全てお相手さん主導でなされていて、
父は従うだけ。
それでも
関係は続いていたのだ。

父はキッパリと、
仕方がなく付き合っていたが、
一刻も早く別れたいといい、
お相手さんは
愛人でもいいから、側にいたいと言う。

伸哉さんもこのお相手さんの処遇に
困ってしまったが、
彼女を調べるうちに胡散臭い人物に、
行きあたった。

その人物は、通常は付き合えないが、
高木の家に借りがある人物で、
ここは一つと、祖父に進言して、
その人物に渡りをつけた途端

あっという間に彼女は店を畳んで
どこかへ行ったらしい。

もちろん、公正証書として残したお相手さんからの
一筆をもらっていた。

今後一切、高木家には関わらない。
今回のことを口外しない。
という一筆。

なんだかドラマの話のようで、
眉唾のような感じもしたが、
母は神妙な顔して、話しているので、
本当のことだろう。

「お祖父様は、普通に暮らしている人間が
知らなくていい人だからって、
どういう人物かは
教えてはいただけなかったけど、、、

お相手さんもどこかの海に
沈められたわけではなく
お祖父様が慰謝料として渡されたお金で、
また、小料理屋さんをされているって
伸哉さんの奥さんのカズさんからは聞いたわ。

伸哉さんもカズさんも
行かれたことがあるんですって。
きっと
私たちは見てますからねっていう
警告でしょうけど。

お祖父様も何もおっしゃらなかったし、
伸哉さんも知らなくていいですの一点張り。

、、、どうなったんでしょうね。」

< 32 / 76 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop