揺るぎのない愛と届かない気持ち
「もうお前寝ろ!

明日始発で帰れよ!

酔っ払い!

って言って、
東吾は寝室のドアを閉めたのよね。」

和室の部屋で寝ようかと思ったが、
酔っ払った長内が何をするかわからなかったから、
ケットを持ち出して、ソファのところで
横にもならずに、ちょっとした物音で目が覚めるくらい、
まんじりともせずに朝を迎えたのだ。

俺は、飲み過ぎて前後不覚になり、
長内がああいう態度を取ったと、
思い込もうとしていたが、
わかっていた。
もうあの時は、わかっていたんだ。

長内は俺のことを
友達としてなんか見ていない。
少なくとも、
あの日の長内は俺を男としてしか見ていなかった。

「すまなかった。
長内のことを、友達以上に思っていなかったのに、
お互いに酔った上とは言え
あんなことになって。
俺は紗英に言い訳ができなかったし、
婚約者がいる長内にしても同じだ。

もし、これで長内の婚約者から訴えられても
俺は仕方がないと思っているけど、

紗英とは、、、紗英とは別れたくないんだ。」

「謝らないでくれる?
余計惨めになっちゃうだけだから。

それにあの日、仕掛けたのは私。
東吾にもわかっていたんでしょ。」

「。。。。。」

やはり思い過ごしではなかった。

「東吾のことを入社した時から、
好みのタイプだと思っていた。
だから、近づけるように頑張って、
付き合うようになって、もう有頂天だったわ。

仲間達の軽いノリから始まった
付き合いだとしても、付き合っちゃえば
こっちのものって。」

長内は今日は酔っ払っちゃいけないからと、
水を飲みながら話し始めた。

「東吾がね、
私のことを女として意識もしてないのに
ただ付き合っているだけって、わかっていたわ。

好意は持ってくれているけど、
友達以上恋人未満、、、どころか
友達、仲間としか認識していなかったわね。
だから、私としては頑張って東吾を
私の方へ私の方へと、ひっぱって来たのに、、、」



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