揺るぎのない愛と届かない気持ち
「いつまでもはっきりとしない東吾に、
私も焦ってきて、
この辺で、同棲を持ちかけようと思ったの。

一緒に住んじゃえば、よくない?って。

会えば優しいのに、
会えないことも多くって、
うちに来ても、必ず東吾は帰って行くし、、
私が東吾の部屋で待ちたいって言っても、
それはちょっと落ち着かないって言うし、

じゃぁ、一緒に住んじゃえば、
そんなことは
何も気にしなくて済むって、、、

私だけが思ったのよね。

それで、東吾って話し出したら、
東吾がその言葉を引き継いで、
恋人をやめようって。

要するに私は振られたわけ。

自分だけが熱くなっていて、
その熱をどこで消化して
いいかわからなくって
友達に戻ろうなんて、
酷い台詞に頷いてしまったのよ。」

あの時、
長内の目が一瞬大きく見開かれたのは、
同じことを思っていたという
偶然に驚いたのではなく、
真逆な俺の言葉に傷ついたんだ。

「友達だから、、、親友だからって
自分に言い聞かせながらも、
東吾の隣にはいたかった。

東吾が次の彼女を作る前に、自分が彼氏を作った。
ただのプライドよね。私は平気ですって、、、
もちろん、
そんなのすぐにだめになっちゃったけど。

東吾から別れを切り出されて、
本当はものすごく落ち込んだ。
もう立ち直れないほど、、、
でも、それを正直に出すのには、
プライドが許さなかったの。」

俺は本当に酷い奴だ。
長内のそんな気持ちを
思いやる事もしないで。

「東吾も、
優しいから来る人拒まずで付き合っては
別れてと言うことを、繰り返していて、
それを見ながら安心している自分がいたの。

私が東吾の横にいる女よって。。。
でも、少しでも東吾への恋慕に
気づかれたら
この立ち位置がなくなることも知っていた。
結構、狡く立ち回ったのよ。

東吾にとって一番近いのは私ですって。

だから、フットサルのメンバーの奥さん達には嫌われたのかもね。」

「長内が、フットサルのマネージャーを辞めたっていうのは。。。」

「仕事が忙しくなったのと、
休みの日はゆっくりしたいということも
あったけど、東吾と私の距離が近いことを、
メンバーと気の置けない付き合いを、
奥様達は嫌ったみたいね。
きっと、
自分たちが嫌いな匂いがしたんでしょう。

結婚式の二次会で会った時に、
ものすごく軽蔑したように見られたから。」

それでフットサルのメンバーの奥さんからの
俺のあたりがきついのは、
そのせいもあったのか。
俺も何となく居心地が悪くなって、
あまり練習にも顔を出さないようになっていた。

「それでフットサルのチーム解散の
BBQパーティーの時に、お声がかかったので
婚約者を連れて行ったわけ。
安心させるためにね。
東吾も紗英さんと来るって言っていたから。

けど、
相変わらず私を受け入れる姿勢は
感じられなかった。
紗英さんの周りにはみんな集まっているのに。

きっと、東吾の隣が彼女になったからなんだと、
思ったら、少し嫉妬したのよ。
東吾のことなんか、何も知らない彼女だから、、、」


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