揺るぎのない愛と届かない気持ち

「それは違う。
みんな紗英と知り合って、
紗英の人となりに好意を持ってくれた

それだけだ。」

「私にはない育ちの良さってやつ？」

長内が自虐めいた台詞を言った。

「紗英は、これ見よがしなことはしない。
長内もみんなのために、
いつも上手く立ち回ってくれていたじゃないか。

紗英と長内は違って当たり前だ。
どっちが優れていてどっちが劣っている
という話でもない。」

「優劣はないけど、
東吾が選んだのは紗英さんだったのよね。

私はね東吾。
自分の本当の気持ちに蓋をしてきたの。
その蓋を開けたら、東吾の隣にいられなくなるから。

もしかしたら、東吾の気持ちが
私に傾くかもしれない。。。もしかしたら。」

どうしてそんなに俺に固執するんだ。
友達に戻ろうと言った自分の未熟さを
後悔した。

「俺は、長内が俺との将来を考えているのが
わかった。
そうやって、長内に引っ張られて結婚しても、
きっと無理だと思っていた。

長内のことは嫌いではない。
でも、将来を考えるほどの愛情はなかった。
同じ未来を想像できなかったんだ。

恋人同士なんて、所詮無理な話だった。
長内の仕事ぶりを見て、本当にできるやつと
感心していた。
マネージメント能力も高い、
こちらの気持ちを先んじてくれる、、、
一緒にいてストレスがない、、、

でも、それだけなんだ。
恋愛感情なんて少しもなかった。

なのに、
人の口車に乗って
恋人らしきことを重ねてしまった。

別れたことで
職場でもフットサルでも
周りと気まずくなったら、
本当に申し訳なくって
咄嗟に友達同士に戻ろう
と言ってしまったんだ。

本当に申し訳なかった。」

頭を下げた。

長内は食べるのか食べないのか、、、
小鉢を箸で突きながら、俯いたまま言った。

「ふっ、、、
私のプライドなんて、木っ端微塵ね。

要するに東吾は私に
一片の愛情もなかったってことでしょう。

友達としてしか見られない。
無理矢理、親友って言っていたのよね。

罪の意識から、
友達としても付き合ってくれていたのよね。」

俺は何も言えなかった。

「友達でいたら、そのうち、、、

東吾は女の子にはモテても、
決して本気にはならないって思っていたのよ。

まだまだ、一人の人に縛られたくないんだって、、、

だけど
紗英さんと会ってからの東吾は、
もう心が持っていかれていた。
今までの女の人とは違う。

私に幸せそうに惚気る東吾に、
私なんかあっという間に隣から転落するのねって、
暗い気持ちになった。」

「ごめん、、、あまりにも無神経だった。
長内と友達に戻ろうと言って、
結構時間が経っていて、それでも
友達付き合いができていたから、
俺は勘違いをして、酷いことをしていた。」