揺るぎのない愛と届かない気持ち
お義母さん 〜東吾
俺はお義母さんから指定された日に、
郊外の海辺の街にある
高木家の別邸を訪れた。
結婚が決まって知ったのだが、
高木の家は昔からの素封家で、
この別邸や、高原にも別荘もあり、
高木の資産運営のための会社も
あるような格式がある家だった。
うちの両親は地方都市で、
父は小さなクリニックの医師、
母は高校の教師をしているような普通の家で、
俺がそのような家の娘である紗英と
結婚すると言ったら
少し恐れ慄いて、
「釣り合わないのは不縁のもとでしょ。
大丈夫なの。」
と心配された。
しかし、あのお義父さんとお義母さんに会って、
そんな杞憂は一瞬に打ち消されたが、
まだ、
言えてない紗英の出産のことを言ったら、
俺は間違いなく勘当されるだろう。
この別邸には管理人である年齢不詳のお年寄り夫婦と、
そのお子さんである初老の夫婦が、日頃は管理してあった。
お義母さんは
この年寄り夫婦を
「伸哉さん、カズさん」
と呼んであった。
天気が良い日で、海の向こうの島が見えて、
水面に映る太陽に光が眩しかった。
そんな見晴らしのきく、リビングに通された。
香りの高い紅茶を出された。
しかし
安易に口をつけられない。
「東吾くん、そんなに畏まらないで。
マナーの試験ではあるまいし、
好きにしてちょうだい。」
そのおっとりとした風貌から中身の鋭さなど
微塵も感じられない
お義母さんが笑いながら、
優雅に
カップに口をつけられた。
「さぁ、宿題はできたかしら。」
しかし、気短に問われる。
俺は慌てて、カップをソーサーに置いて、
テーブルの上に音をさせないように、戻した。
少し、姿勢をただして、
気を入れ直して話し出す。
先日
長内と話したことを。
お義母さんは途中話に口を挟むことなく、
俺がお義母さんを見ていないと
まるでそこにいないかのように、
無音で俺の話を聞いておいられた。
手に汗をかきながら、
気まずいところでは視線を外して
少し言い澱みながらも、
全てをありのままに話した。
話終わったら、
ワイシャツの首周りが湿っていて、心地悪い。
「未遂のような未遂じゃないような。。。
まぁ、彼女の未練も東吾くんのいらぬ優しさが
助長させたわね。
しかし、彼女の婚約者も可哀想に。
双方の親御さんには申し訳ないと
思いながらも、
元婚約者や紗英に対しては、
どうなんでしょうね。
あなた、
人に対する優しさがわかっていないわ。
いい格好しいなのよ。
人に嫌われたくない、よく思われたい。。。
彼女に申し訳ないというより、
我が身可愛さでしょ。」
お義母さんは情け容赦なく俺を切り刻む。
しかし全てが身に覚えがあり、
全てが当たっているだけに何も反論できない。
「遊びだって割り切って女の子を
取っ替え引っ替えしている方が、
まだ拗れなかったかもね。
それもいただけない話だけど。
まぁ、一番はうちの可愛い娘にした仕打ちね。」
心臓が、、、止まるかもしれない。
「そのことに決着をつけるのは、
私たち親の仕事ではなく紗英と
あなたとが話し合うこと。
夫が、
あなた達を離婚させようと
躍起になっているけど、
今のところ、余計なお世話ね。」
郊外の海辺の街にある
高木家の別邸を訪れた。
結婚が決まって知ったのだが、
高木の家は昔からの素封家で、
この別邸や、高原にも別荘もあり、
高木の資産運営のための会社も
あるような格式がある家だった。
うちの両親は地方都市で、
父は小さなクリニックの医師、
母は高校の教師をしているような普通の家で、
俺がそのような家の娘である紗英と
結婚すると言ったら
少し恐れ慄いて、
「釣り合わないのは不縁のもとでしょ。
大丈夫なの。」
と心配された。
しかし、あのお義父さんとお義母さんに会って、
そんな杞憂は一瞬に打ち消されたが、
まだ、
言えてない紗英の出産のことを言ったら、
俺は間違いなく勘当されるだろう。
この別邸には管理人である年齢不詳のお年寄り夫婦と、
そのお子さんである初老の夫婦が、日頃は管理してあった。
お義母さんは
この年寄り夫婦を
「伸哉さん、カズさん」
と呼んであった。
天気が良い日で、海の向こうの島が見えて、
水面に映る太陽に光が眩しかった。
そんな見晴らしのきく、リビングに通された。
香りの高い紅茶を出された。
しかし
安易に口をつけられない。
「東吾くん、そんなに畏まらないで。
マナーの試験ではあるまいし、
好きにしてちょうだい。」
そのおっとりとした風貌から中身の鋭さなど
微塵も感じられない
お義母さんが笑いながら、
優雅に
カップに口をつけられた。
「さぁ、宿題はできたかしら。」
しかし、気短に問われる。
俺は慌てて、カップをソーサーに置いて、
テーブルの上に音をさせないように、戻した。
少し、姿勢をただして、
気を入れ直して話し出す。
先日
長内と話したことを。
お義母さんは途中話に口を挟むことなく、
俺がお義母さんを見ていないと
まるでそこにいないかのように、
無音で俺の話を聞いておいられた。
手に汗をかきながら、
気まずいところでは視線を外して
少し言い澱みながらも、
全てをありのままに話した。
話終わったら、
ワイシャツの首周りが湿っていて、心地悪い。
「未遂のような未遂じゃないような。。。
まぁ、彼女の未練も東吾くんのいらぬ優しさが
助長させたわね。
しかし、彼女の婚約者も可哀想に。
双方の親御さんには申し訳ないと
思いながらも、
元婚約者や紗英に対しては、
どうなんでしょうね。
あなた、
人に対する優しさがわかっていないわ。
いい格好しいなのよ。
人に嫌われたくない、よく思われたい。。。
彼女に申し訳ないというより、
我が身可愛さでしょ。」
お義母さんは情け容赦なく俺を切り刻む。
しかし全てが身に覚えがあり、
全てが当たっているだけに何も反論できない。
「遊びだって割り切って女の子を
取っ替え引っ替えしている方が、
まだ拗れなかったかもね。
それもいただけない話だけど。
まぁ、一番はうちの可愛い娘にした仕打ちね。」
心臓が、、、止まるかもしれない。
「そのことに決着をつけるのは、
私たち親の仕事ではなく紗英と
あなたとが話し合うこと。
夫が、
あなた達を離婚させようと
躍起になっているけど、
今のところ、余計なお世話ね。」