揺るぎのない愛と届かない気持ち

東吾と彼女 〜東吾と紗英

「東吾さんが長内さんを思い遣っているのは、
わかった。
それでも友達と言っているので、
そうなんだろうと、納得できる
こともあった。

けど、時々忘れないでよっていう
長内さんからの棘のメッセージも来る。

失恋したから、話を聞いて、、、
恋がうまくいかないから話を聞いて、、、

まるで、自分の恋愛がうまくいかないのが
東吾さんのせいのように。

東吾さんもお弁当の話はさておき、
長内さんと会うときは、
会ったときは
必ず連絡をくれた。
多分、私を安心させるためだろうけど、
私はどうして、そこまで長内さんに尽くすの、
って苦々しく思っていたわ。

友達だって、、、
そんなの、
あなたが過剰に思っている彼女への罪悪感を
利用されているだけじゃない。

違う?
東吾さん?」

紗英の目が真っ直ぐに俺の目を射抜く。
何の誤魔化しも許さないと言っている。

覚悟はしていたが、
俺は大きく深呼吸をして自分のありのままの姿を
もしかして紗英が失望するかもしれない
自分のありのままの姿を曝け出そう。

「長内のことを好きだったのかと、聞かれたら、
嫌いではなかった。
自分の立ち回りをきちんと考えて、
無駄なく動く長内と一緒に
仕事をするのは、楽だった。。。。」

だから、自分のフットサルにも誘ったし、
会社で何かとコンタクトを
取らないといけない部署間でのことは、
長内に頼った。

自分が頭ひとつ抜き出るための、仕事上のプレゼンの時も、
長内は必ず手伝ってくれて、
俺の仕事がスムーズに行くようにしてくれた。

しかし、
だからと言って長内と男と女として
付き合おうとは思わなかった。
同期、同僚、仕事の仲間、、、
男と女以外のパートナーシップ。

それが2年して3年して、
いやもっと早いうちから、
長内の俺に対する好意には、気がついていた。
気がつきながら、知らないふりをしたんだ。
そのことで傷ついた顔をする長内に
申し訳ないと思いながら。

酷いことに、長内に諦めてもらおうと、
他の女性と付き合ったこともある。
長内は表面良かったね、と言いながら、
いつもと変わらない態度で相変わらず
俺の側にいた。

そんな邪な思いでする
他の女の人との付き合いが、
うまく行くはずもない。
相変わらず、仕事やフットサルで俺は長内と
変わらない付き合いをした。

自分が楽だったんだ。

そのうちフットサルのメンバーから、
囃し立てられるようにして、
付き合ってみるかという軽い気持ちで、
付き合い始めた。

幸せそうにしている長内を見て
俺もこれがいいのかもしれないと思って。。。

でも違った。
長内と一緒にいてもどこか居心地が悪くて。
それは長内はとても俺に尽くしてくれたと
思うけど、
やっぱり、一生一緒にいたい人ではなかった。

そのことがわかると、
長内になんて言ってこの関係を
終わりにしようかと、悩んで。

悩んだけど、どうしたら長内を
傷つけないですむのかわからずに、
結局、仕事に逃げた。

同じ会社だから、俺の忙しさはわかっていて、
それも仕方がないと思ってくれてはいたが
俺の部屋で待ちたいって言い出して、、、

それは嫌だと思ったんだ。
長内が俺のテリトリーに入るのを、嫌だと思ったんだ。
俺は酷いやつだ。

付き合おうと言っておいて、
恋人同士になったのに、
自分のテリトリーには入れないなんて。

長内が甲斐甲斐しく俺の部屋を掃除して
食事を作って、、、
俺が帰ってきてドアを開けたら、
長内の匂いが、する。。。。

長内とは仲間以外の何者にもなれない。。。

いつ言い出そう、いつ言い出そうと思って
3ヶ月ほど経った頃に
長内の言葉を制して俺が言った。
長内は同棲しようと、言いたかったらしい。。。

どうしても
長内と一緒に見る未来が、俺にはなかったんだ。

俺のいい加減さの結果だ。
わかっていたはずなのに、
流されるように付き合い出して。。。」



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