揺るぎのない愛と届かない気持ち

追い詰められる 〜東吾

「長内さんの態度に自分への
変わらない好意を、
感じていたはずなのに、家へあげて泊めた。

長内さんのシナリオ通りっていうけど、
どこかで、
そうなってもいいと、
いう自分の気持ちがあったんじゃないの。

もしかしたら私だけ知らなくって、
あなたたちは今も
心と身体で繋がっていたのかもしれない。」

「それはない!」

紗英の思いもよらぬ疑惑に俺は
精一杯の否定をした。
そんなことはない、誓ってもいい、
そんなことはない。

「じゃぁ、どうして家にあげて泊めたの?
タクシーに乗せて帰せばよかったでしょ。
一人で帰れそうもない、、、
じゃぁ、婚約者を呼べば?

彼女も大人よ、ちゃんと帰れるか帰れないか、
一人で帰されるわけくらいわかると思う!

これは東吾さんが優しいからなんてことは、
理由にならないでしょ!」

紗英の口調がだんだんと厳しく激しくなってきた。

そうなんだ。
後から思い返せば、
家に連れ帰らない方法なんて、
たくさんあったはずだ。
それを
大丈夫だろう
多分、大丈夫。
だと自分に言い聞かせた甘さがある。

後悔が山ほど押し寄せる。

頭を抱えて、
紗英に自分の後悔を何と言って伝えようかと、
考えた。

「東吾さんは、結局浮気したのよ。
最後の一線を超えなかっただけで、
キスもして、きっと他にもいろいろ、、、

私が臨月にもかかわらず
二人のそういう姿が、
私に与える苦痛も考えずに、、、

私は一度あの世に行って、帰ってきた。
それは、あなたのためではなく悠のため。

私は東吾さんが、
長内さんとこれからどうなっても
もう構わない、、、」

「紗英、、、」

紗英の決意に、俺の息は止まった。

「ずっと私たちの間に立ちはだかっていた
長内さんの真意が見えた。

もう、彼女と争う気にもならない。
東吾さんと彼女が一緒になっても、
私は知らない。

どうして東吾さんと結婚しようと思ったのかも、
もうわからない。

幸せだったのかしらね?
私たち。。。
きっと長内さんの思うがままに、
疑心暗鬼に陥って。。。」

長内の思うがまま、、、

「嫌だ、、、長内の思うがままだなんて。
確かに長内と付き合ったことはある、
友達だと思って付き合ってきた期間も長い。

でも、これで、紗英と別れることは、
俺にはできない。
別れると言われても、
ずっと紗英たちが戻ってくるのを待って、、

紗英と悠と家族でいたい。
紗英を悠を、、、」

「勝手な言い分ね、、、
東吾さんの長内さんに対する本当の思いは
わかった。
でも
それが浮気になったのが、
どうしても理解できないし、信じられない。」

「自分が信じられない。
安っぽい言い方に聞こえるかもしれないけど、
本当にまんまと流された
自分が信じられない。

長内の婚約ということ、
結婚間近で元カレだけど、
もうとうの昔のことと言われて、
結婚式に招ぶと言われたことで、、、
箍がはずれたんだ。

もう大丈夫だろうと、、、

長内と寸前まで行ってしまったということは、
ものの弾み、酔っていた、、
、、、、
どれもその理由でどれも言い訳にもならない。」

それから俺は言葉を失った。

「東吾さん、、、、
あなたは最低よ。」

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