揺るぎのない愛と届かない気持ち

二人の思いは? 〜紗英と東吾

「あなた、
子供ができたことが嬉しくなかったの?」

私は妊娠以来ずっと気になっていたことを尋ねた。
俯いていた東吾さんの顔が素早く上がって、
どうしてそんなことを聞くの?
という驚愕の顔になった。

「嬉しかったよ。ものすごく嬉しかった。」

「でも、浮かない様子もあった。。。」

「嬉しくなかったんじゃないんだ。
本当に嬉しかった。
けど
俺たちは話し合って、
子供はもう少し先と話したばかりのことだった。
なのに、妊娠して、、、きちんち避妊も
していたはずなのに。

紗英はキャリアを諦めなきゃいけなくなって、
もしかしたら、俺がわざと
妊娠させたと恨んでやしないかと、、、
悩んでいた。」

ため息が出た。。。

「そんなこと思うわけないじゃない。
避妊なんて100%じゃない。

それは、
妊娠がわかって戸惑ったけど、嬉しかった。

仕事も頑張りたかった、
キャリアも積みたかった、
でも、
子供は今私たちのところに
来たかったんだって、、、
素直にそう思えたの。

なのに、東吾さんは浮かない顔をする時が
多くて、、、
安定期になっても、私にキス一つもしない。。。」

そう、安定期になって東吾さんに
お医者様の言葉をそれとなく伝えたり、
妊娠期の本を読むように言っていたのに、
彼は悠を妊娠したと思われる時から、
一切私に触れてこようとはしなかった。
キスひとつ、ハグひとつ、、、しない。

「怖かった、、、
望まぬ妊娠をさせたのに、
安定期になったからと言って、
自分の欲のままに、紗英を抱くなんて、、、
ただ、
盛りのついた動物のように思われるんじゃ
ないかって。

キスをしたら、止まらない、
ハグをしたら止まらない、、、
とにかく紗英に触れたら、
止まらないってわかっていたから。。。」

東吾さんは消え入りそうな声で言った。
思い悩みながら話すその姿は、
気弱な少年のようだった。

「だから、長内さんに流れていったの?

東吾さんは彼女とセックスするのを、嫌がらない何かを
いまだに持っていたのよ。
ただ、長内さんと同じように蓋をしていただけで、、、」

私はどんどん黒くなる。
東吾さんを追い詰めて、追い詰めて、
壊したくなっている。

「それは絶対にない。
それがあるとすれば、
長内だけではなく誰とでもよかった。

紗英じゃない誰かに、いとも易々と
流されてしまった自分に
一番腹が立っている。」

「。。。。。」

「紗英、、、
もうひとつ後悔していると言えば、、、
どうしてこうやって、早くに話し合って
こなかっただろうと。
自分のプライドとか、
紗英がどう思うだろうとか恐れる前に
きちんと話していればよかった。」

それは
私も同じ思いを抱いていた。

「言わないでも、私がこういう人間だって、
東吾さんはわかってくれているって、
思い込んでいた。

話さなくては相手の気持ちなんて
わからないのに。

でも
東吾さんは
私が長内さんと距離が近いというと、
決まって友達だから
大事な友達だからって、、、

信じていたの。

東吾さんの態度からも、
不誠実な様子はなかったし、
そうなん友達なんだって。

長内さんの気持ちはさておき、
東吾さんは長内さんに友情以外
何も持っていないって。」

「。。。。」

「なのに
とんでもない裏切りをされた。。。」



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