揺るぎのない愛と届かない気持ち
私は長内さんに会いましょうと、
連絡した。

このことを、東吾さんには知らせまいと、
母には口止めをしておいたいた。
会う事自体に反対をするであろう父や、心配性の慶にも
内緒にした。

東吾さんに会うことが知れると、
きっと、
自分も同席すると言い出しそうだったから。
私を守るため、と言いながら。

長内さんは私に何を言いたいのだろうか。
また胸をえぐらそうなことを
言われるかもしれないし
ただ、
謝罪されるだけかもしれない、、、

要するに、
何を言われるのかわからないという状況で、
東吾さんが同席するとなると、
また、彼女を頑なにして、
本音を聞き出せないかもしれないと、
危惧したのだ。

今日のカフェも、
敢えて彼女には高木の関係だとは告げなかった。
もしもの場合に備えて、
母が警備を敷いてはいたが。

考えすぎだろう。

早めにカフェに着いて、
長内さんが来るのを待った。
久々の一人での外出が、
こんなに緊張する用事だなんて、、、

そんな思いをしながら、
軽く溜め息をついているところに、
スタッフに案内をされて、長内さんがやって来た。

小柄で、相変わらず愛くるしい感じだが、
さすがにその顔に生気がなかった。

「お待たせしました。
私がお呼びたてをしたのに、遅くなってしまって、
申し訳ありません。」

充分すぎる挨拶を、気持ちがのらない平坦な言い方で、された。
そんなに気分がのらないのなら、話し合おうなんて、
申し出をされなければいいのに。


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