きょうだい愛
「―――汚い手で結衣に触れるな。クズが」
「な―――」
―――ドンっ!
私の視界から男が消えた。
そして現れたのは……
「結衣、遅くなってごめんね」
わたしが心から待ち望んでいたおにいちゃんだった。
「う、うぅ……おにいちゃん……。うわぁぁぁん」
「よしよし……怖かったね。俺が来たからもう大丈夫だよ」
ストーカーへ対する言葉は鋭く尖っていたけれど、わたしを抱き締める腕はいつもどおりの温もりを持つおにいちゃんで。
おにいちゃんの声、温度、感触……すべてに安心感を覚える。
震えていた身体は落ち着き、楽に空気を吸えるようになった。
おにいちゃんが助けに来てくれた。汚れたわたしを優しく包み込んで宥めてくれた。
それが嬉しくて、今度は安堵で瞳が濡れていく。
おにいちゃんはわたしのことを嫌いにならないでいてくれる……それだけで十分幸せだ。