きょうだい愛
「おにいちゃんっ、ありがとう……」
わたしの拘束を解いてくれたおにいちゃんはわたしの目元を拭って微笑みを浮かべる。その笑みにわたしはまた惚れ直すんだ。
「俺が結衣を助けるのは当たり前のことだから気にしないで。それよりも……こいつ、どうしようか」
おにいちゃんがゴミを見るような視線を向ける先にいるのは、おにいちゃんから渾身の蹴りを食らって気絶したストーカー。
パキッパキッと指の関節の音を鳴らすおにいちゃんの目が凶悪過ぎてまたもや背筋に寒気が走る。
おにいちゃんだけは絶対に敵に回したくない……。
「警察に通報して終わりにしよう!おにいちゃんの手が汚れちゃう方が嫌だもん!ね、そうしよう?」
「結衣はなんて優しい子なんだ……帰ったら消毒してあげるからね。よいしょっと」
「わ、わぁ!?」
納得してくれてほっとした直後、おにいちゃんはわたしに立つ気力がないのを察したのかわたしを軽々と持ち上げた。
人生初のお姫様抱っこ。こんなときだというのにちょっと嬉しいと思ってしまう。
そんなわたしの喜びとは対照的に、おにいちゃんは怪訝そうな顔をしてわたしに問いかけた。