課長と私のほのぼの婚
課長は伊豆のリゾートホテル開発の責任者を務めたことがあるそうで、名所や名物、温泉などについて詳しかった。今日は久しぶりに下田へ行くと聞いて冬美は驚く。
『私も下田まで行きます』
『へえ。ご観光ですか?』
『えっ、いえ……』
冬美は口ごもった。まさか、好きなアイドルの故郷を訪ねる傷心旅行とは言えない。普通の失恋ならともかく、【推しロス】である。
課長のようなタイプに理解されるとは思えず……
『たまには独りでぶらっと、こう……どこかに行きたいなあと思いまして』
いいかげんな返事だが、課長はうんうんと納得してくれた。
『一人旅もいいですよね。僕も似たようなものです』
『そうなんですか?』
『朝起きたら、急に金目鯛の煮つけを食べたくなって。気がついたら電車に乗っていました』
『……』
仕事はできるが少し変わった人という噂は本当らしい。
わざわざ下田まで魚を食べに行くなんて。
冬美はリアクションに困り、ただ笑みを浮かべるのみ。だが課長は、それを好意的なものと受け取ったのか、驚くような提案をしてきた。
『私も下田まで行きます』
『へえ。ご観光ですか?』
『えっ、いえ……』
冬美は口ごもった。まさか、好きなアイドルの故郷を訪ねる傷心旅行とは言えない。普通の失恋ならともかく、【推しロス】である。
課長のようなタイプに理解されるとは思えず……
『たまには独りでぶらっと、こう……どこかに行きたいなあと思いまして』
いいかげんな返事だが、課長はうんうんと納得してくれた。
『一人旅もいいですよね。僕も似たようなものです』
『そうなんですか?』
『朝起きたら、急に金目鯛の煮つけを食べたくなって。気がついたら電車に乗っていました』
『……』
仕事はできるが少し変わった人という噂は本当らしい。
わざわざ下田まで魚を食べに行くなんて。
冬美はリアクションに困り、ただ笑みを浮かべるのみ。だが課長は、それを好意的なものと受け取ったのか、驚くような提案をしてきた。