課長と私のほのぼの婚
「え……ええと、それはその」


高級食材の店をチラ見する。陽一も不思議そうに目をやるが、何も言わずにコートを脱いで冬美に着せかけた。


「買い物もいいけど、そんな格好では風邪を引きますよ」

「あっ、そんな、私は大丈夫だから」

「いいから、いいから。さあ、帰りましょう」


肩を抱かれて帰宅した。


(あああ、もう……)


買い物を失敗するは、夫に寒い思いをさせるは……自分は「妻失格」だと落ち込んだ。



無口になった冬美を心配してか、陽一は家に帰ってからも優しかった。会社から持ち帰った弁当と、妻の弁当も温め、お茶まで淹れてくれる。


「冬美さんもお弁当だったのですね」

「は、はい」


結婚して初めての夕飯で彼に手間をかけさせ、しかも半額シールを見られてしまった。

恥ずかしさで、冬美は縮こまる。


「いただきます」


陽一は手を合わせると、弁当を美味しそうに食べた。営業部が用意したのは、普通の鮭弁当だ。

冬美はぼうっとして、彼が食べるのを眺めた。


「冬美さん、食べないのですか?」

「あっ、はい。いただきます!」


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