課長と私のほのぼの婚
「そんなにですか?」


冬美の感想は、ますます彼をご機嫌にさせた。


「レタスのサラダとオレンジもどうぞ。冬美さんが食材を用意してくれたので助かりました」

「そんなの、なんてことありませんよ。朝ごはんを作ってもらえて私のほうが幸せです」


ちょうどパンが焼けたので、苺ジャムを塗る。

ジャムは陽一の荷物に入っていた。ちなみにコーヒーセットも彼の持ち物である。学生時代からこれまで一人暮らしだった彼は、毎朝パンを主食にしていたと言う。


「簡単なものでよければ、朝食は僕が作ります。なんなら、夕飯の仕込みもやっちゃいますが」

「ええっ?」


信じられない申し出だった。


「すごいですね。私なんてずっと実家住みで、ご飯作りは母親任せで、米研ぎと味噌汁くらいしか作れないのに」


言いながら情けなくなるが、陽一はニコニコと聞いている。


「大丈夫、冬美さんはやればできる人です。でも、頑張りすぎはいけません。これまでどおり、冬美さんらしく生き生きと暮らしてくれたら僕も幸せです」

「か、課長……」


なんという大らかな男性(ひと)だろう。

< 49 / 51 >

この作品をシェア

pagetop