課長と私のほのぼの婚
それに課長は、助清くんを応援し続けることまで応援してくれる。夫公認で推し活できるとは思わなかった。


「でも、一つだけ注文があります」

「えっ? な、なんでしょう」


冬美はデレた顔を引きしめる。一体どんな注文だろう。想像もつかないけれど……


「そろそろ僕のことを、名前で呼んでください」

「……」


そんなことか……と、緊張がほぐれる冬美だが、じっと見つめられてだんだん困惑してくる。

これまで一度も名前で読んだことなどない。


「ええと、いつから?」

「もちろん、今からですよ」

「ひい……」


いきなりの要求に焦りまくるが、逃げるのは許されない。なにもかも甘えて、彼の望みを一つも叶えられないなんて、それこそ妻失格である。


「分かりました。では、いきますよ」

「うん」

「よ……」


舌がこんがらがりそうだ。しかし、やらねばならない。


「よ……陽一さん」


彼の真面目な顔が一気にほころぶ。冬美がいたたまれなくなるほど、喜んでいる。


「よくできました。やっぱりきみは、やればできる人です」

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