課長と私のほのぼの婚
「その点、課長はグルメだし、高級食材を好むタイプよね……ん?」
弁当を電子レンジで温めようとして、冬美は手を止める。
そんな課長が、なぜパンとコーヒーと目玉焼きという質素な朝食なのか――
椅子に座り、しばし考え込む。
普段はシンプルな食生活なのかなと単純に解釈したが、どうも違う気がする。
「そうだった。課長はあの日……」
頭に浮かんだのは海辺のホテル。冬美のぶんも料理を追加してくれた課長。僕の大好物ですと、金目鯛の煮つけを嬉しそうに食べていた。
お魚が好きなんですね、なんて会話するうちにだんだん楽しくなって、帰りの電車で交際を申し込まれたときも抵抗なくうなずいていた。
「年上の男性もいいなあって初めて思ったっけ……って、そうじゃなくて!」
弁当をテーブルに戻し、半額シールをじっと見つめる。
売れ残りの弁当など買ってしまう自分とは価値観が違う。そして肝心なのは食材そのもの。
課長という人は、わざわざ下田まで金目鯛の煮つけを食べに行くようなグルメなのだ。
「安い食材ではダメなんだ、きっと」
卵もレタスも特別な生産地とか農場とか、こだわりがあるだろう。
一斤100円の食パンなど論外だ!
「そうだ! 会社の近くに高級食材のお店があったはず。一度も入ったことないけど……あそこなら課長の口に合う卵やパンがあるかも」
冬美はエコバッグを握りしめると、アパートを飛び出した。
弁当を電子レンジで温めようとして、冬美は手を止める。
そんな課長が、なぜパンとコーヒーと目玉焼きという質素な朝食なのか――
椅子に座り、しばし考え込む。
普段はシンプルな食生活なのかなと単純に解釈したが、どうも違う気がする。
「そうだった。課長はあの日……」
頭に浮かんだのは海辺のホテル。冬美のぶんも料理を追加してくれた課長。僕の大好物ですと、金目鯛の煮つけを嬉しそうに食べていた。
お魚が好きなんですね、なんて会話するうちにだんだん楽しくなって、帰りの電車で交際を申し込まれたときも抵抗なくうなずいていた。
「年上の男性もいいなあって初めて思ったっけ……って、そうじゃなくて!」
弁当をテーブルに戻し、半額シールをじっと見つめる。
売れ残りの弁当など買ってしまう自分とは価値観が違う。そして肝心なのは食材そのもの。
課長という人は、わざわざ下田まで金目鯛の煮つけを食べに行くようなグルメなのだ。
「安い食材ではダメなんだ、きっと」
卵もレタスも特別な生産地とか農場とか、こだわりがあるだろう。
一斤100円の食パンなど論外だ!
「そうだ! 会社の近くに高級食材のお店があったはず。一度も入ったことないけど……あそこなら課長の口に合う卵やパンがあるかも」
冬美はエコバッグを握りしめると、アパートを飛び出した。