課長と私のほのぼの婚
海側の席は一人分の座席が向かい合わせに設置されている。向かいの席はもちろん、通路を挟んだ隣の席にも乗客がおらず気楽なものだ。

冬美はリラックスして、灰色の空を映す海を眺めた。


その一報が入ったのは昨夜。

冬美が仕事を終えて会社の通用口を出るタイミングだった。

通知を知らせたスマートフォンをバッグから取り出し、メッセージを確かめると……


――冬美ちゃんの推しが結婚するよ!


アイドルグループのオタ友Aちゃんが、冬美の担当『助清(すけきよ)くん』の大ニュースをリンク付きで送ってくれたのだ。



「嘘っ、嘘っ!! すっ、すけきよおおおーーーーーー!!!!!」



悲鳴を上げ、膝から崩れ落ちる冬美を通行人が遠巻きに見ていく。でもそんなことどうでもよかった。気にする余裕などない。

恐れていたことがついに現実になってしまったのだ。


「助清くん……マジだったのね」


ここ半年の間に、助清くんの「恋人」と噂される女が、SNSで匂わせ発言を繰り返している。

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