私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠
「送ろうか?」
「大丈夫だよ、これくらいは慣れていかないと…。」
「そうか…。」
「気を遣ってくれて、ありがと。あ、スマホ忘れた。取って来るね。」
菜々美が広報部に戻るとすぐに、女子社員の悲鳴のような声が聞こえた。
「瀬川さん!大丈夫ですか!」
「課長!しっかりして下さい!」
慌てて中塚が部屋へ飛び込むと、菜々美がうずくまっていた。
「おい、瀬川!」
「大丈夫。立ち眩みして…。」
中塚は、第二課の本郷課長が近くにいるのに気付くと、
「俺が瀬川を家まで送って行きます。後の事頼みます。」
とだけ告げて、菜々美を横から抱きかかえるようにして広報部を出た。
「一人で歩けるから。離して、中塚。」
「無理するな、フラつくんだろ。」
周りで女子社員がキャアキャアと何か話していたが、この際だ。気にしない。
何とでも二人の噂を立ててくれと、郁也は菜々美を支えて堂々と社内を歩いた。