私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠


 同じ頃、恒三は孫の要を病院へ呼びつけていた。

「じい様、何かご用でしょうか?」

恒三は息子の大介より、孫を信頼している。
自分の手で、ビジネスマンとして一から育てたのだから誰より安心できる相手だ。

「お前に任せていた事だが…。」

要の顔を見るなり、恒三は腹立たし気に話始めた。

「ああ、菜々美の件ですか?」

「高村との縁談は断ってきたぞ。」

「そうでしょう。親父が言い出したんですが、相性が悪そうですしね。」

「おまけに、友人だとかいう男の話をしておった。」
「友人?」

「結婚を申し込まれたとか匂わせておったぞ。いい相手なのか?」

「友人と結婚?まさか…。」

あの誠実そうな中塚という男が、軽々しく菜々美にプロポーズする筈がない。

「この件、少し調べてみます。」

「ああ、頼んだよ。」

「でも、じい様。」
「何だ?」

「じい様が言ってた『本命』って、誰なんですか?」

「まだ、言えん。」
「はあ…。わかりました。その友人については後日、ご報告します。」


< 102 / 131 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop