私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠
奏佑が言わんとしている事は、菜々美にも見当がついた。
恐らく瑠美あたりが、色々と彼に余計な憶測を吹き込んだんだろう。
「主治医の先生が、患者の家族の事情までご存知なんですか?」
中塚がチョッと不愉快そうに奏佑に絡む。
「いや、たまたま彼女の従姉妹が相談してきたんだ。
勿論、そんな話は医者の領分では無いから断ったよ。」
瑠美の名前を奏佑の口から聞いて、菜々美の中にあった鳴尾家への不満が爆発した。
「だけど、今あなたも私に聞いたわ。ここは、自分で買ったのかって。
私の事を疑ってるんでしょ?財産目当てとか…。」
「まさか!」
みるみるうちに、菜々美の表情は硬くなっていく。
「私は何度も言ってるのに。遺産なんかいらないって!
私は独りで生きていくから、鳴尾の家とは関わり合いたくないって!」
菜々美が珍しく声を荒げている。
中塚も、こんな菜々美は初めて見た。彼の方が動揺していた。
「何年も知らんぷりしていたくせに、どうして今さら構って来るの?
どうして私の事を放っておいてくれないの?」
もう我慢の限界だった。夏からずっと我慢していた気持ちが溢れて、止まらない。
「それでも、あの人達は納得してくれない。何度言っても…。」
菜々美の頬を涙がつたう。
「落ち着いて、菜々美。俺はお前を信じてる!」