私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠


 奏佑は頽れる菜々美を抱きとめると、そっとその場に寝かせた。

貧血だと思われるが、念の為に脈をとり、呼吸や鼓動を確認する。

「菜々美は…どこか悪いのか?君は知ってる?」

菜々美の診察をしながら、奏佑は中塚に尋ねた。

「それは…。自分には言えません。本人に聞いて下さい。」
「かなり弱ってるな…。君が会社から送ってくれたのか。ありがとう。」

落ち着いた対応は流石に医者だ。
益々、中塚は自分の出番は無いように感じていた。

「いえ、同期ですから当然です。じゃあ会社に戻ります。菜々美の事は…お願いしますね。」
「わかった。任せてくれ。」

「ホントに…。ホントに、お願いしますよ。」

諄いくらいに念を押して、郁也はマンションから出て行った。



中塚が帰った後、奏佑が菜々美をそっと抱き上げて廊下を進む。
このまま寝かせた方が良さそうだ。リビングか寝室か…。

一人暮らしのマンションは綺麗に片付いていた。

ぐるりと見渡せば、こじんまりとしたキッチンとダイニングがあり
少しゆったりとしたリビングがあった。

リビングの隣が寝室だろうか。

流石に、寝室へ入るのは躊躇われたのでリビングのソファーに菜々美を下ろした。

「う…ん…。」
「気がついたか?」
「気持ち…悪い…。」

菜々美は身体を起こして洗面所へ行こうとしているが、まだふらついている。

奏佑が抱き起して歩かせるが、辛そうだ。


「病院へ行くか?」

菜々美は無言で洗面所に籠ってしまった。



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